8月22日、政府は、新しいエネルギー政策の策定に向けてこの夏に実施した「討論型世論調査」の結果を公表した。
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政府が示した2030年時点の原子力発電依存度で「ゼロ」を支持する割合が46.7%と最も多く、「15%」が15.4%、「20─25%」が13.0%だった。
討論型世論調査では無作為で選んだ約6800人に電話で世論調査を行い、このうち285人が2日間の討論会に参加。電話での調査、討論前、討論後の3回にわたって調査した。
参加者285人のうち「原発ゼロ」を支持する比率は、電話調査での32.6%から41.1%、46.7%と段階が進むごとに上昇した。
原発依存度「15%」への支持は16.8%→18.2%→15.4%で推移。依存度「20─25%」への支持は13.0%→13.3%→13.0%だった。
7月2日から今月12日までに約8万9000件集まったパブリックコメントのうち約7000件の集計経過も公表された。「即時ゼロ」が81%、「段階的にゼロ」が8.6%と約9割が原発ゼロを支持している。
7月から8月にかけて全国各地で行われた意見聴取会では、意見表明を申し込んだ1542人のうち68%が「原発ゼロ」を支持している。
古川元久国家戦略相は「今回の議論の総括ができれば、それをエネルギー・環境会議に報告して、それをベースに(新しいエネルギー)戦略をまとめていきたい」と述べた。新戦略とりまとめの時期について9月以降にずれ込むと示唆した。
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私は「討論型世論調査」は、理解が進めば進むほど15%案に傾くように想っていた。少なくとも、2回目の回答と3回目の回答を比較すると(絶対値は兎も角)、増えるのは15%案しかないと想っていた。
しかし外れた。結果はそうではなかった。
私は、(参加者が都会の人が中心であるため)議論を積み重ねると、原発事故の恐怖心があっても、原発の安全性が徐々に刷り込まれ、経済の安定が重要であると考えるようになると想っていた。しかし、結論を見ると、原発事故の恐ろしさが予想以上に国民に完全に刷り込まれ、一つ間違えると圧力容器の崩壊、東京まで避難地域になるところだったとの恐怖心が強く残っている印象を受けた。
最終的に政府のコメントは次のようになる。
“政府はこの夏、討論型世論調査を始めいくつかの手法を用いて国民の皆様のご意見をお聞きしました。その結果、2030年までには脱原発依存社会を形成していくことに決定しました。今後、政府は脱原発依存社会の形成により一層努力してまいりますので、国民の皆様におかれましてもご理解ご協力をよろしくお願いします。“
私も含めて一般的な感覚の持ち主ならば、「現実的な対応として、ある程度原発依存を打ち出そうとした政府の目論見は見事はずれた。政府として日本としてはこれから大変だな」と想うに違いない。しかし、脱原発依存という言葉を良く考えていただきたい。脱原発社会ではない。脱原発依存社会なのだ。依存が入っている。15%なら依存していると言えるのかを良く考えるべきだ。15%は一般的に依存しているとは言えないのではないか。従って「調査の結果、依存しない選択肢である0%、15%が多数を占めた」ので、可能な限り原発に依存しない社会を形成してまいります。
この夏、すべては政府のシナリオの中だった。
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